学習記録

フェノール樹脂に関する特許明細書を読んでみた

フェノール樹脂に関する特許を3件読みました。3件とも住友ベークライト社の特許で、岡野シリーズで取り上げられていたため読んだ方も多いのではと思うのですが、自分なりにまとめてみます。

読む際の進め方は、以前書いたベンゼンのハロゲン化の明細書の記事と同様の方法で行いました。

1件目(特開2000-198826)

出願人 住友ベークライト株式会社
公開日 2000.7.18
発明の名称 ハイオルソ型フェノール樹脂の合成方法
従来の課題 従来の方法では合成したフェノール樹脂のオルソ結合比率が85%以下だった。具体的には、

  • 酢酸亜鉛触媒存在下でフェノール類とアルデヒド類を反応させる方法では、オルソ結合比率80%を超えるフェノール樹脂の合成が難しい。
  • 無触媒条件下でフェノール類とホルマリンを反応させる方法では、オルソ結合比率70%を超えるフェノール樹脂の合成が難しい。
  • 無触媒条件下でフェノール類とパラホルムアルデヒドを反応させる方法では、オルソ結合比率85%を超えるフェノール樹脂の合成が難しい。
解決方法 超臨界水または亜鉛臨界水中でフェノール類とアルデヒド類を反応させることで無触媒条件下でフェノール樹脂のオルソ結合比率を向上する。

2件目(特開2001-072731)

出願人 住友ベークライト株式会社
公開日 2001.3.21
発明の名称 フェノール樹脂の合成方法
従来の課題
  • 従来の方法では反応時間が長い。(方法により3時間や6時間もかかる。)
  • また、有機溶媒、触媒を使用すると反応後に有機溶媒、触媒を分離する操作が必要になる。
解決方法
  • 超臨界水中で反応を行うことで有機溶媒、触媒を使用せず、しかも短時間でフェノール樹脂を合成できる。
  • 重量平均分子量10000を超える高分子量フェノール樹脂の合成も短時間でできる。

3件目(特開2003-73438)

出願人 住友ベークライト株式会社
公開日 2003.3.12
発明の名称 フェノール樹脂の合成方法
従来の方法
  • 耐圧容器にフェノール類、アルデヒド類、水を仕込んで374℃以上に加熱し超臨界水中でフェノール樹脂を合成する。
  • あるいは、予めフェノール類、アルデヒド類、水を374℃以上に加熱しておいてから混合し、超臨界水中でフェノール樹脂を合成する。
従来の課題 アルデヒド類は高温条件下で分解するため、実際に縮合反応するアルデヒド類の量は仕込み時より少なく、得られる樹脂の収率も極めて小さい
解決方法 フェノール類および水、もしくはそれらの混合物を予め374℃以上に加熱し、これとアルデヒド類を混合して、無触媒で反応させる。

3件の特許比較

これらは同じ会社の同じテーマの特許で、立て続けに公開されています。(2000年→2001年→2003年)どのように違うのか、まとめてみたいと思います。

同じ点

3件に共通しているのは次の2点です。

  1. 超臨界水を使用している。
  2. 溶媒、触媒を使用しない。

超臨界水という聞きなれない言葉が出てきました。調べてみると、

(前略)水の場合,374℃,218気圧(22.1 MPa)を境として相変化の有無が変わるため,この温度圧力条件を臨界点とよび,これより温度と圧力の高い水を超臨界水とよんでいます。(中略)超臨界状態では両者が混じるため,触媒を用いることなく温度,圧力の 操作で反応を進行させることが可能となります。

出典:東北大学 阿尻研究室

とあります。つまり374℃以上、218気圧(22.1MPa)以上の水を超臨界水というのですね。また、引用文にも書かれている通り超臨界水には触媒を使わずに反応できるというメリットがあります。

そのため、これらの特許のように超臨界水を使用することで、従来使われていた溶媒や触媒を使用せずにフェノール樹脂の合成が可能となったのですね。

異なる点

次に異なる点ですが、まず1件目と2件目を比べると、解決する課題が異なります。

1件目 合成フェノール樹脂のオルソ結合比率を向上する。
2件目 反応時間を短縮して高分子量フェノール樹脂を合成する。

つまり1件目と2件目では、同じ方法(超臨界水使用)によりフェノール樹脂合成の異なる問題を解決しているのが分かります。

次に2件目と3件目を比較します。

従来の課題 合成方法
2件目
  • 反応時間が長い。
  • 溶媒や触媒の分離作業が必要。
フェノール類、アルデヒド類、水を374℃以上に加熱しておいてから混合するか、予めフェノール類、アルデヒド類、水を374℃以上に加熱しておいてから混合して反応させる。
3件目 収率が極めて小さい。 フェノール類および水、もしくはそれらの混合物を予め374℃以上に加熱し、これとアルデヒド類を混合して、無触媒で反応させる。

つまり、2件目で存在していた課題を3件目で解決しているのが分かります。

まとめ

素人なりに整理してみました。同じ会社の同じテーマの特許を比較すると、少しずつ進化していっているのが見えて面白いです。

ただ、ノートにまとめブログの掲載するというここまでの作業に結構時間をかけてしまったため、次回から少しでも短縮していきたいと思います。(ノート各1H弱、ブログ1.5H程)

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