今回読んだのはTOTOが出している防汚スプレーに関する特許です。
元々岡野の化学で「溶解度積」について勉強したときに検索してダウンロードしておいたものでした。
なぜTOTOの特許を選んだかというと、以前TOTOのトイレの特許を読んで興味深いと感じたためです。
溶解度積の復習
溶解度積を勉強してから1か月も経っていないのですが、一瞬どのようなものだったか思い出せず復習しました。
動画で見た方が早いと思い、こちらを参考にしました。
そうそう、溶解度積とは、
「水に溶けにくい塩の陽イオンと陰イオンのモル濃度の積のこと」
でしたね。
動画にあるように、AgCl(塩化銀)を例にすると、
1 | まず水溶液中では下記の反応式のように、わずかながらAgClがイオンとなって溶け出し、平衡状態になる。
AgCl(s) ⇄ Ag⁺ + Cl⁻ |
2 | このとき下記の式が成り立つ。
平衡定数 K=[Ag⁺][Cl⁻]/[AgCl(s)] ※[]はモル濃度を表す。反応式の左辺を分母に置き、右辺を分子に置く。 |
3 | 2の式の両辺に[AgCl(s)]をかける。
[Ag⁺][Cl⁻]=K[AgCl(s)] この式より得られる値を「溶解度積」といい、一般的に「Ksp」と表す。 |
読んだ特許明細書について
以前と同様、2件の特許について自分なりに理解できた内容を比較してみます。
1件目 | 2件目 | |
公開番号 | 特開2008-50586 | 特許3859170 |
出願人 | TOTO株式会社 | TOTO株式会社 |
発明の名称 | スプレー剤 | コーティング組成物およびそれを用いた被膜の製造方法 |
用途 | トイレを含む水回り品の汚れを防止したり洗浄したりする。 | トイレを含む水回り品の汚れを防止したり洗浄したりする。 |
従来の主な課題 | 持続的に洗浄効果を発揮できない。 | 従来は、2種類の液を混合させて使用する等の方法だったため、一液型のものが求められていた。 |
本発明の内容 |
を含むコーティング組成物を噴霧装置を備えた容器に充填しスプレー剤とする。 |
本発明のコーティング組成物は下記を含む。
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効果 |
|
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相違点
2件の特許は同じTOTOが出しているということもあり、内容がかなり似ています。
主な相違点は次の2点かと思います。
- 異なる点を課題としている。
- 発明品に含まれる3成分のうち、1つ目が異なる。(1件目は水溶性高分子、2件目はポリビニルアルコール)
ちなみに特許1件目の「水溶性高分子」については、次のように書かれています。
ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロースの群から選択される少なくとも1種の水溶性高分子
つまり特許2件目に書かれている「ポリビニルアルコール」も含まれていますね。出願時期が1件目は2008年、2件目は2006年で1件目の方が新しいので、使用する成分の範囲を広げたのだと思います。
共通点
そして主な共通点は下記の通りです。
- 用途が同じ。
- 発明品に含まれる3成分のうち、2つ目と3つ目が同じ。
- 効果が同じ。(評価方法も全く同じ。)
2件の特許は異なる課題を同じ方法で解決している。

感想
本来なら「溶解度積」を勉強してすぐに読むべき特許を後回しにしていましたが、時間が経ってから読むと復習になるというメリットを感じました。
先日ようやく岡野の化学が終わり、今は橋元の物理を進めていますが、復習のためにも今後も化学関連の特許も読んでいこうと思います。
また、特許といえば斬新で画期的な方法が使われるというイメージがありましたが、類似する特許を数件まとめて読んでみると、異なる課題を同じ方法で解決するものも意外とあるのだな、と感じました。