今回読んだのも物理関連の特許です。
先日橋元シリーズで取り上げられたため、早速復習も兼ねて油圧ジャッキの特許を検索してみました。
油圧ジャッキの原理
油圧ジャッキの原理については、ビデオセミナーでも出てきたこちらのサイトを参考にしました。

まず、圧力と力と面積には、「圧力=力÷面積」の関係が成り立ちます。
そのため、左側の小さい錘によって生じる圧力は、「10kgf÷1㎠=10kgf/㎠」となります。
ここでパスカルの原理が必要になるので、調べてみました。参考にしたのはこちらのサイトです。
(前略)流体が密閉容器の中に入れられていて、各分子が静止している場合、あらゆる地点の圧力は等しくなります。(後略)
油圧ジャッキも流体(オイル)が密閉容器に入れられているので、パスカルの原理が働きますね。左側の小さい錘によって生じた圧力10kgf/㎠が容器内のあらゆる地点にかかります。
そして、先ほどの式「圧力=力÷面積」を変形させると「力=圧力×面積」となります。
この式を使って、右側の大きい錘を持ち上げる力を求めると、「10kgf/㎠×4㎠=40kgf」となります。
よって、小さい錘で大きい錘を持ち上げられるのが分かりますね。
その他参考サイト:https://d-engineer.com/fluid/pascal.html

読んだ特許明細書について
今回は同じ会社が出願した「油圧ジャッキ」の特許を3件読みました。
公開番号 | 出願日 | 出願人 | |
1件目 | 特開2012-1322 | 2012.1.5 | 日産ライトトラック(株) |
2件目 | 特開2012-56650 | 2012.3.22 | 日産ライトトラック(株) |
3件目 | 特開2012-56651 | 2012.3.22 | 日産ライトトラック(株) |
背景技術の比較
以前管理人さんより「背景技術を比べると大体同じことが書いてある」というアドバイスを頂いたので、3件比較すると…、
なんと、3件とも背景技術が全く同じ文でした!
【0002】
車体などの対象物をジャッキアップするため、特開2002-87767号公報(特許文献1)に記載されるような油圧ジャッキが知られている。この油圧ジャッキは、ポンプピストンの近傍を支点として揺動するハンドルを上下させることで、オイルタンクからシリンダにジャッキオイルを供給し、シリンダに嵌挿されたピストンを突出させて対象物をジャッキアップする。特開2012-1322、特開2012-56650、特開2012-56651より
ちゃんと比較してみないと気付かなかったと思います。全く同じとは、面白いですね。
内容の比較
内容を簡単に比較します。
背景技術こそ同じですが、課題も解決方法もそれぞれの特許で異なっていました。
従来の課題 | 解決方法 | |
1件目 | 油圧ジャッキは普段は車に積んでおくものなので、ベース部分(油圧ジャッキの底部分)の面積が小さい。しかし、ベース部分の面積が小さいと、取り出して路面に置きジャッキアップする際の安定性がよくない。 | そこで本発明では、使用時のみ引き出せる補助ベースを設置することとした。 |
2件目 | 従来の油圧ジャッキでは、ハンドルを上下に動かすことでジャッキアップするが、構造によっては大きく動かしずらく、ジャッキアップの効率がよくなかった。 | そこで本発明では、ハンドルを上下ではなく、水平方向に往復動させる構造とした。それにより、ハンドルを大きく動かすことが可能となり、ジャッキアップの効率がよくなった。 |
3件目 | 従来の油圧ジャッキでは、ハンドルを下方に動かしたときしかジャッキアップされず、上方へ動かしたときはジャッキアップされないため、効率がよくなかった。 | そこで本発明では、上下どちらに動かしたときにもジャッキアップされる構造にし、効率を向上した。具体的には、従来の油圧ジャッキには1つしかなかったポンプピストンを2つにした。 |
解決方法のイメージ図
特許2件目について
2件目の構造が従来とどう変わったか、図で比較してみます。

上図の左側が従来の構造(1件目の構造)、右側が2件目の構造です。青い矢印はハンドルの動作方向です。
従来ではハンドルを上下に動かしていましたが、この発明によって水平方向に往復動するようになったのですね。それによってハンドルを大きく動かすことが可能になり、ジャッキアップの効率を向上できました。
特許3件目について
次に3件目と従来の構造(1件目の構造)を比較します。

上図の上側が従来の構造(1件目の図)、下側が3件目の構造です。(図が見にくく申し訳ないですが…)
従来の油圧ジャッキには、「24ポンプピストン」は1つしかありませんでしたが、この発明では2つ設置することとしました。こうすることで、ハンドルを上下どちらに動かしてもジャッキアップするようになり、効率向上につながったのですね。
感想
機械を専門分野にするかはまだ分からないのですが、読んでみると意外と理解しやすかったです。もちろん、講座で油圧ジャッキについて勉強していてこそですが、今回読んだ3件は初心者に易しい、理解しやすい特許だったと感じました。
というのも、実は最近同じ会社の類似特許を読むと、内容が酷似しており、まるで間違い探しのようで、初心者の私にはなぜわざわざ新たに特許を出願したのか到底分かりかねるケースが立て続けに数社あったのです。
微妙に一部の内容を変えてあるのですが、コアの部分に関わるとは思えませんでした。もちろん、私の勉強不足のせいで理解に至らなかったと判断しました。
そういう意味でも今回の特許は3件とも「課題」、「解決方法」の違いがはっきりしており、理解しやすいと感じました。
今後も特許読みを重ねて、以前理解できなかったような特許も理解できるようになりたいと思います。